鳥って、目に感情がよく表れると思います。
11年前、鳥と暮らし始めるまでは、全然知らなかったことでした。
哺乳類とは違って、鳥は顔の表情筋がそれほど発達していないから、感情が見えにくい生き物なんじゃないかな・・・?
昔はそう思っていたんです。
でも、実際に鳥と暮らしてみると違っていました。
鳥は、想像をはるかに超えて賢く、感情豊か。
そして、「目は口ほどに物を言う」という言葉が、鳥にもピッタリ当てはまるんですよね。
サザナミインコのサンちゃんのこと
鳥の目にまつわる出来事として、私が真っ先に思い起こすのは、以前一緒に暮らしていたサンちゃんのことです。
サンちゃんはルチノーのサザナミインコで、2010年4月に我が家にやって来ました。
最初の頃のサンちゃんの目は、一言で言うなら人間不信の目。
お迎えしたばかりの鳥は、新しい環境に慣れるまで、警戒心を見せることがよくありますが、サンちゃんの場合は特にその傾向が強くて、人間への不信感と恐怖心が根づいているようにさえ見えました。
新しく世話係になった私を、ジトーッとした目で一日中観察。
私が近づこうものなら、身を低くして目を三角に吊り上げ、口をクワッと開けた凄い形相で、「これ以上近づいたら、噛みつくからね!」と言わんばかりの戦闘態勢。
ここは安全な場所なんだとサンちゃんに分かってもらえるまで、最初の数週間はあえて距離を置いて接していました。
ペットショップでの出会い
サンちゃんと私が出会ったのは、あるペットショップでした。
それより2ヶ月ほど前、リュウちゃんというサザナミインコを先に我が家へお迎えしていて、その友達になってくれる子を探そうと、いくつかのペットショップを当たっていたんです。
サザナミインコがいると知って訪ねてみたら、店内の奥の方に「SALE」という札の貼られた薄汚れたケージがあり、その中でサンちゃんは、あまり表情のない顔で虚空を見つめていました。
ムッツリ不愛想な子ではあったけれど、「体格が良くて、逞しそう」という印象から、お迎えを即決。
ただ、何となく、お店の人がサンちゃんに触れる時の手つきが雑で乱暴なのが気になってはいたんですよね・・・。
ケージの扉を開けたり身体に触れたりする時に、きちんと一声かけてあげるとか、鳥に対する基本的な礼儀が見られない。
生後3か月近く経っていたサンちゃんは、すでに挿餌は卒業していて、十分物心もついていた頃です。
「人間は嫌なことをする」「人間は無礼」
そんな不満や憤りを、サンちゃんはペットショップ時代に静かに募らせていたんだろうと思います。
目の表情の変化
幸いだったのは、サンちゃんが先住サザナミのリュウちゃんを一目会った時から大好きだったこと。
飼い主にベタ馴れの甘えん坊リュウちゃんが人間と楽しそうに遊んでいる様子を毎日観察するうちに、サンちゃんも「人間って、案外悪いやつじゃないのかも?」と、思い直してくれたんじゃないかと思います。
鳥は、信頼できる人間かどうかを判断する際に、他の鳥がその人間に対してどう振る舞っているかとか、その人間が他の鳥にどう接しているかということを注意深く観察しますよね。
サンちゃんは、我が家へ来て数週間経つと、リュウちゃんともう1羽の先住鳥である文鳥ピーチが人間と遊んでいる輪の中に自分も入りたい!という姿勢を少しずつ見せてくれるようになり、その頃には目の表情に尖った感じがなくなっていました。
鳥の目は心を映す鏡
サンちゃんは7年1か月生きました(2017年3月に天国へ)。
温厚で、優しくて、めったに怒ることもない気立ての良い子でした。
そんなサンちゃんが、お迎えした頃、あれほど凶暴な目つきをしていたというのは、よほどのことだったんだろうな、と思います。
先住鳥のリュウちゃんとピーチ、さらに後から来た3羽と人間との賑やかな共同生活の中で、サンちゃんの目がだんだん穏やかさと素直さを取り戻し、生き生き輝くようになったのは、世話係としてはとても嬉しいことでした。
愛鳥には、いつも満たされた目をしていてほしいものですよね。